学会資料

不安と混乱が少ない環境づくりで水分摂取量が安定につながったケース

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1.はじめに

今回、不安と混乱が少ない環境づくりで水分摂取量が安定し、認知症状が改善されたことにより、家族負担が軽減されたケースを経験したので若干の考察を加え、報告する。

2.事例紹介

・A氏
・79歳
・男性
・要介護2
・既往歴:アルツハイマー型認知症・2型糖尿病・大腸癌
・HDS-R:査定不能
・認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅲb
・障害高齢者の日常生活自立度:J2

H25年5月頃、車を運転中自宅に戻れなくなった。

H26年に要介護1と判定。服を上下逆に着たり、急に怒り出したりすることが目立ってきた。以前よりアルコール摂取量が多く、H26年の春頃まで毎日飲んでいた。

H26年5月より他デイサービス(以下、「他DS」)利用開始。H27年4月に要介護2と判定。氏の意向でドライブすることが増え、5時間に及ぶ日も出てきた。

妻の疲労から、希望でH27年4月より当デイサービス(以下、「当DS」)週1回利用となる。

3.ケアプラン

外出時や当DS利用時に混雑した環境の中で急に怒り出す事や暴言があること、一日の水分摂取量が350cc以下であることから脱水を原因とする身体不調型と考え、一日の目標水分摂取量を1800ccとした。また、環境不適応も考え、担当制にする。

4.ケア方法・展開

利用開始当初は、机に伏すことも多く、「帰る。」といった発言が多く聞かれ、提供された水分を飲まない日が続いた。環境不適応を改善するため、担当職員を付け、なじみの関係づくりを行った。しかし、水分量が上がらず、帰宅願望や暴言といった周辺症状が続いた。また、デイ到着後も送迎車からなかなか降りなかったり、玄関に居座ったりする日もあった。

H27.8月に当DSが週2回利用になることを受けて、打開策として、妻とドライブする習慣が身に付いていること、人生史より長距離運転手であったこと、他DSでも早い送迎時間だったことから妻もその方が氏の送り出しがスムーズにできると理解を示し、H27.9月より、早めの迎えで長めの送迎時間(以下、「ドライブケア」)で対応する。

1ヶ月後、妻から「朝早い迎えになったことで、朝食後寝ることなくすぐ迎えの車に乗り、本人の好きなドライブができたのが良かった。」と話される。送迎中は他の利用者や添乗の職員と穏やかに会話する姿が見られた。その後、ドライブケアにおけるなじみの関係づくりを進め、来所時の表情も良くなっていった。少人数でのユニット対応に取り組み、一定の水分量を確保できるようになった。

H27.11月に当DSが週4回利用となり、利用から9ヶ月後には、妻にとって一番の介護負担だったドライブの時間が減少し、社会交流としてタブレット講習会などに参加できるようになった。

5.結果

不安と混乱が少ない環境づくりで水分摂取量が安定につながったケース

不安と混乱が少ない環境づくりで水分摂取量が安定につながったケース

ドライブケアによって安定した水分量が摂取できるようになった。

6.考察・まとめ

竹内は、認知症ケア4原則の中で「周辺の環境がしきりに変わることのないようにしてあげることが、安定した関係をつくる」と述べている。利用当初、ドライブケア後、いずれも「行動の了解」の姿勢で対応していたが、利用当初のなじみの関係づくりでは、水分量が上がらず覚醒水準が低い状態で状況認知ができず、暴言などの周辺症状が現れていたと考える。その後、ドライブケアを取り入れたことで、不安や混乱の少ない環境の中で、徐々に周囲に順応し状況認知が可能になったと考える。

 

発表者:齋藤 嵩史(看護師)
    佐藤 由佳(介護員)