学会資料

自立支援・認知症ケアに及ぼす驚異のパワーリハビリテーション効果

1.はじめに
今回パワーリハビリテーション(以下PR)という運動的手法により、薬理学的効果が生じ認知症状の軽減と身体機能の改善に繋がり在宅生活が継続となったケースを経験したので若干の考察を加え報告する。

2.事例紹介
・女性:80歳 要介護度3
・病名:高血圧症、アルツハイマー型認知症、膝関節痛
・障害高齢者の日常生活自立度:A1
・認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅱa

平成25年春から物を失くす、被害妄想が顕著に見られアルツハイマー型認知症と診断される。自宅に閉じこもる事が多くなり、歩行状態が低下した事から隣町で一人暮らしをしていた息子が同居となる。息子は夜勤帯の仕事で日中に休んでいると何度も起こされたり、仕事中に電話が掛かってきたりと就業に大きな影響を与え、このままでは仕事が続けられないという不安から入所となった。しかし、帰宅願望が強く介護拒否の為退所となる。なんとか在宅で生活していく為に安定した生活とリハビリを目的に当デイサービス(以下DS)利用開始となる。

3.ケアプラン
①自宅・DSにていつでも人を呼び同じ事を何度も聞く(知的衰退型)

②DSに来る事で環境が変わり強い拒否や帰宅願望がみられる(環境不適応型)

③いつとなくDSで不穏症状がみられ、利用当初の問診で脱水・低栄養が疑われた事から(身体不調型)と捉えニーズを認知症状の軽減と身体不調の改善とした。1日水分1500cc以上・食事1500㎉・PR・歩行、就労と介護の両立の為に継続的なDS利用に取り組んだ。

4.ケア方法・展開
利用開始時は週3回の利用予定だったが、拒否や体調不良を理由に休む事が続いた為、送迎を担当制にして信頼関係の構築を図った。歩行状態は不安定で自宅での転倒が何度かあった。またスプーンを持つ事がままならず口を運んでなんとか食事をする状態だった為、低栄養状態が続いていた。朝から「帰りたい」「明日から来ない」と不穏症状も見られた。3ヵ月後、継続的なPRにより水分・食事量が増え、歩行の安定が図られた。朝から見られていた不穏症状が夕方にも出現する事から脱水による日内変動、酷く険しい顔つきになり落ち着かなくなる日が週内で何度か見られる事から便秘による週内変動と捉え再アセスメントを行った。1日水分2000cc、食事1500㎉、PR、歩行、社会交流、ファイバーの使用に取り組む事とした。6ヶ月後、利用当初は外出を拒否していたが意欲的に出掛けられ馴染みの方と楽しむ光景が見られた。夕方に出現した不穏症状が減少し、不安からDSへ電話をかけてくるが安定した生活を送っている。

5.結果
PRの継続により認知症状の軽減と身体機能の改善がみられ、やる気スコアでの向上も見られた。

①いつでも聞かれていた人呼びは覚醒水準が上がった事で減少した。

②利用拒否は担当制にして信頼関係が構築され消失した。

③DSでの水分量が確保され、スプーンによる食事摂取も出来るようになり食事量が確保された事で体調は安定したが、夕方になるとDSで不穏症状がみられる日内変動と週に酷く険しい顔つきになり不穏症状がみられる週内変動はまだ時折見られる。DS週3回の利用から現在は毎日利用が可能となった。

自立支援・認知症ケアに及ぼす驚異のパワーリハビリテーション効果

6.考察
竹内は認知症とは状況認知に失敗しその結果としてその状況にマッチしない行動(不適応行動)をとるというが、その状況を認知するという働きは身体の活動性によって大いに影響されると述べている。本事例では、心身の活動性(動作性・体力・行動意欲)の低下により閉じこもり身体不調・知的衰退といった認知症状を引き起こした利用者に対し、継続的なPRによる歩行能力の改善と水分量の確保を図った事で、身体的活動性と覚醒水準が向上し規則的な生活へ繋がっていったと考える。また、安定したDS利用や外出活動の参加により氏の閉じこもりが解消され、息子も就労の継続が可能となっている。しかしDSの送り出しや食事の準備による介護負担が継続してある為、介護による時間に追われる生活の解消を今後の課題としていきたい。

動画はこちらdown.gif
【利用開始当初】  【現在】

発表者:兵藤 拓也(介護員) ・ 佐藤 佳奈(介護員)