学会資料

夜間頻尿の改善から家族ストレスの軽減へ

 1.はじめに
竹内は、「介護は、よい方向であれ悪い方向であれ、家庭内の人間関係を変えていく」と述べている。今回、夜間頻尿の改善から家族ストレスが軽減され、主介護者のQOLが向上したケースを経験したので若干の考察を加え報告する。

2.事例紹介
・女性:82歳 要介護3
・病名:心室細動・高次脳機能障害・高血圧
・障害高齢者の日常生活自立度:B2
・認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅳ

 Y県M市生まれ。19歳頃結婚。缶詰工場に14年ほど勤務し、その後夫とともに菓子店を経営。平成22年12月、心室細動を患い入院。結果、高次脳機能障害が残る。その後、社会交流・運動機会の確保のため、当DS週4回利用開始となる。

・家族構成:本人、長女夫婦。2世帯住宅で孫夫婦も敷地内に住んでいる。
・主介護者:長女 副介護者:長女の夫、長女の娘

3.ケアプラン
昨年夏頃訪問の際、主介護者より氏の夜間の排尿が4回あり、その度に起きてポータブルトイレへの移乗等の介助を行なっていることが負担となっているとあった。主介護者は就労しており、夜眠れない事から目標を夜間頻尿の改善とし、水分量、活動を上げる為、水分・パワーリハ・歩行各担当者がそれぞれの「強化者」として氏に関わることとした。具体的な目標として、DS利用時水分量1300cc、パワーリハ6機種3セットと歩行距離120mとした。

4.ケア方法・展開
強化者として関わっていく中で、氏の体力、意欲低下もあり歩行は始めのうち60m~90m歩くのがやっとの状態であり、水分量は近づいても歩行距離が伸びず夜間の排尿回数は変わりなかった。頻回な排泄介助のため、主介護者が眠れないことが続いたことから、精神的・身体的な負担となり「このままでは在宅で見られない」との言葉も聞かれた。主介護者が訪問介護の仕事をしており、水分摂取に対しての理解を示してくれていたため、自宅での水分量は約1000cc摂取できていた。DS利用時の水分目標値を見直し、1300cc⇒1500ccとした。歩行は平均すると120mには達しなかったが目標値を歩ける日もあった。しかし、夜間の排尿は4回と変わりないため更に目標値を水分量1600cc、歩行120m⇒240mに上げ関わっていった。DS利用時の水分量は約1700cc程度摂取する様になり、歩行も氏の体力に合わせ数回に分けて実施し、合計距離を伸ばした。今年に入り、介助は必要だが夜間の排尿が4回から2回に減少。介護者の睡眠も確保できるようになり、精神的、身体的な負担が軽減し「だいぶ楽になった」との声が聞かれた。現在、氏の体力も向上し、以前より疲れたとの訴えが少なくなり、歩行も1回でまとまった距離を歩けるようになった。水分も目標値である平均1600ccを継続して摂取できている。氏のDS、SS等の利用に加え、副介護者のDSの送り出し等の協力もあり、現在主介護者は就労や自営業の夫の仕事の手伝いを行うだけでなく、自分の余暇活動の時間を持ちながら、氏と共に在宅生活が継続できている。

5.結果

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6.考察・まとめ
竹内は「“夫の世話が十分にできないこと”あるいは自分が自分の親の世話をしていることそのものが、多少うしろめたさをもたらす」また「夫への気使いから自分自身の生活を削ってそのためにストレスが高じる」と述べている。本事例は、日中の活動量向上によって昼間の血液循環を良くし日中の排尿量が増え、水分を多く摂ることで良眠する事により夜間頻尿の回数が改善され、介護負担軽減・ストレス軽減に繋がったと考えられる。その背景には在宅生活の基盤となる家族関係が良好で協力的であった事、そして副介護者の存在があり介護に対する理解・協力があった事で家族の介護力が大きかったと考えられる。また、就労の継続、余暇活動が確保できたことから家族のQOLが向上したと考える。自立性の向上は、よりQOLの高い生活への可能性を広げ、利用者・家族の生活向上に資するものである事を学んだ。今後も在宅生活を続けることが出来るようケアを継続して行きたい。