学会資料

独居の認知症高齢者~在宅生活の継続に向けて~

1. はじめに
現在の認知症ケアは発展途上とされ、その現状から施設入所を余儀なくされるケースが後を絶たない。今回認知症高齢者にパワーリハビリテーション(以下=PR)を実施し、介護者のストレスと最期まで地域で暮らしたいと願う本人に対し、チームとして自立支援に取り組んだケースを経験したので、若干の考察を加えて報告する。

2. 事例紹介
・女性
・79歳
・要介護2
・病名:アルツハイマー型老年期認知症、高血圧症
・多発性脳梗塞後遺症、パーキンソン症候群
・障害高齢者の日常生活自立度:J1
・認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅲa        

結婚し男児二人を授かるも40歳代で夫を亡くす。女手ひとつで二人の息子を育て大学まで出す。息子達は結婚後独立し独居生活となり、平成23年12月に歩行不安定で転倒を繰り返し通所の依頼を受ける。閉じこもりで認知症状があり、通所利用には強い拒否が続いていた。

3.ケアプラン
失禁・頻尿・夜間不眠、転倒を繰り返し、自宅では物忘れや食材の管理が出来ずに、掃除、洗濯、入浴もせずに汚れたままになっていた。原因として「身体不調型」と判断。「家に誰も来なくなった」と地域での孤立感も伺え、通所利用の拒否に対しては「環境不適応」を想定し、担当者が頻回な訪問を繰り返し、通所での「脱水・低栄養・低活動・低体力」の改善を目標に利用開始となった。

4.ケア方法・展開
週1回利用からはじまり、心配された環境不適応はPR担当者を介して軽減され、自宅での水分量や活動量の確保に関しては、利用しない日にケアマネと相談員が訪問し一緒に昼食を摂る関わりを継続して行った。2ヵ月後、水分補給とPRの効果(活動性の向上)や仲間活動等により、歩行状態、失禁、頻尿、夜間不眠が改善されていった。本人の困難な部分はヘルパーが補完することで在宅生活は軌道に乗り始め、息子のストレスも軽減して行った。しかし、4ヶ月頃から自宅前や近所の庭に放尿する行為が見られる様になる。6ヵ月後、体力に自信がつき部落内を散歩することが多くなり、途中空き家や他者の庭で排尿を繰り返し、隣市に住む息子にも苦情が入りストレスが強くなる。息子から「外に出るな」と抑制がかかり、本人の認知症状も強くなり地域からの偏見の目が増していった。12ヶ月後、幾度となく施設入所の話が浮上する中で、担当者会議において話し合いが行われる。まだ自立した生活は可能であり、本人が望む生活を継続させてやりたいとの思いが一致し、水分、栄養、活動量を増やすことになった。15ヶ月後、包括支援センターにより地域住民と認知症を理解する講座と、関係者での話し合いの場が設けられ理解が得られ始めた。週5回の利用となり水分、食事量が確保され体調が改善した本人の表情は明るくなり、自ら積極的に地区運動会の反省会や毎朝のラジオ体操に参加するようになった。自宅での認知症状も改善され、自分でやろうとする意欲が増し、現在はヘルパーが補完する部分が次第に減ってきている。

5.結果

独居の認知症高齢者 独居の認知症高齢者

6.考察
独居の高齢者は孤食により食事が偏りやすく、身体不調を起こし、閉じこもりになり認知症状を発症する悪循環に陥りやすい。氏はパワーリハにより身体不調が改善し、地域との関係が再構築され認知症状は消失していったと考える。本事例における独居認知症高齢者が在宅生活を継続していくためには、1.パワーリハによる仲間との有酸素運動により身体不調が改善したこと。2.ケアマネや民生委員、地域包括支援センターにより地域のストレス(異様感)の解消への介入。3.独居の認知症高齢者を持つ通い介護者に、これまで通りの自由時間が提供できたことが大きなポイントになったと考えます。

 

阿部 英明(看護師)
野竹内 晶子(居宅介護支援専門員)
佐々木 政広(生活相談員)
小泉 利晴 (機能訓練士)
信坂 ひろみ(訪問介護)