ストレスなき家庭生活へ向けて

○阿部 伸一(生活相談員)・今野 恵梨(介護員)・佐々木 政広(生活相談員)・寒河井 ひとみ(介護員)

1.はじめに

今回夜間不穏・徘徊により介護ストレスが生じた利用者・家族に対して、認知症の軽減と介護者の仕事の継続からストレスが改善されたケースを経験したので若干の考察を加えて報告する。

2.事例紹介

  • 男性・74歳・要介護度5
  • 病名:低酸素脳症後遺症 腹部大動脈瘤術後
  • 障害老人の日常生活自立度:B1
  • 認知症老人の日常生活自立度:Ⅳ

長年大工の仕事をしていた。性格は頑固で短気だが明るい性格。現役の大工として働いていたが平成21年1月腹部大動脈瘤の為入院。手術後に心停止で低酸素脳症を発症し要介護となった。平成21年4月よりデイサービス利用開始。しかし在宅で不穏や徘徊があり目が離せない状態が続き妻のストレスが大きくなっていった。以上により本人の症状消失の為再アセスメントを実施した。

3.ケアプラン

不穏や徘徊(不意な立ち上がり・飛び出し)になる時間帯が夕方・夜間に多く不眠もあり脱水による身体不調型と考え、徘徊を周りが抑制した時乱暴になるという症状は抑制というきっかけがあり葛藤型と考えた。以上からケアプランは「水分・活動量の確保・安定剤の中止」とし徘徊に対して抑制しない事にした。また妻のストレス・介護負担軽減の為にサービス利用を増やす事を提案するが、拒否があった為信頼関係作りを行う事にした。

4.ケア方法・展開

DSが休みの日は妻が介護をしていたが、仕事の日は娘が見ていた。しかし子供も小さく娘に迷惑をかけられないと思い妻は仕事を辞めようと考えていた。仕事を継続して行えるようにサービスを増やす事を提案するが、拒否があった為、何度も訪問し信頼関係を作った。2ヶ月後週2回から週3回へとサービスを増やし仕事も継続する事が出来ていった。しかし在宅での水分が思うように進まず不穏や徘徊が継続していた事から、再度サービスの利用を増やし本人の体調を整えていきたい事を話すが受けれてもらえなかった。信頼関係が足りないと考え、介護者へ頻回に訪問し悩みや愚痴聞きをしているうちに何とかしてあげたいという共感の思いが出てきた。また、仕事の日や介護者に用事がある時は遅くまで本人を預かるようにし、少しでも負担が軽減するように関わっていった。訪問を繰り返し介護者と親密になる事で、なんでも相談してくれるようになり少しずつ信頼関係が出来ていった。3ヶ月後、妻の仕事の継続のため、日曜日に他事業所のデイサービスを利用されるが、環境不適応を起こし途中で帰宅させられる事が続いた。仕事の継続が困難になり悩んでいた為、スタッフが事業所に説明に行ったところ、症状は次第に軽減し、妻も仕事を継続する事が出来ていった。10ヶ月後、サービスを増やす了解を頂き週3回から5回、翌月から週6回利用となった。水分・活動量が増えた事で夜間不穏・不眠が軽減された。ストレスが軽減された事で15ヶ月後には安定剤を中止する事が出来た。妻からは「今は介護が苦にならない。夫にはもっと元気になってもらいたい。」との声が聞かれた。現在もデイサービスを利用されているが、介護の負担やストレスがなくなり家庭内の雰囲気も明るくなっている。

5.結果

1日の平均水分量

1日の平均水分量

ケア開始時の1日の平均水分量が701㏄だったが、10ヶ月後デイサービスの利用回数が増えた事で1日の平均水分量が1398㏄、15ヶ月後には1698㏄を摂取する事が出来た。脱水が改善され、症状が軽減した事で妻のストレスがなくなり、たまに夕方の不穏や徘徊、夜間不眠がある日も問題視しなくなった。

6.考察

竹内は、ストレスの原因の根本には本人・介護者の相互の価値が横たわっているとし、その価値は役割の変化により変わりうるとしている。今回脱水が改善され意識レベルと活動量が上がり、それに伴い日中の覚醒も上がった事で本人の夜間不穏・不眠は改善されていった。この夜間の症状改善と日中のデイサービス利用により、本人は妻からの介護といった干渉がなくなり、また妻も仕事の継続など介護生活以前の役割を維持する事でストレスが軽減されていったと考えられる。本事例ではこの互いに干渉し合わない時間が出来た事で、相互の価値を大事なものと認識し、ストレスのない生活を築きあげたと考えられる。

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